拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 そこまで考えたところで緩く頭を振って思考を振り払うと、ザイオンが中央に鎮座する寝台の掛布を捲り、少々強引に片足を突っ込みながら乗り上がる。
『ニャッ《ぬおっ!? そなた、我を足蹴にするとは何事だ!》』
「足蹴とは人聞きの悪い。何度も言っているが、そこは俺の寝床だ。少しは詰めろ」
 ザイオンからの抗議をさらりと受け流し、何食わぬ顔で寝台に横たわる。ザイオンは《うぬぬ》と唸りながらも、俺とスペースを分け合うようにやや端に避けて丸まった。
 その様子にやれやれと息をつく。
 ……まったく、気ままなことだ。
 伝承に残る精霊は皆、もう少し協調性をもっていたように思う。そもそも、歴史上のいとし子といえば救国の聖女の代名詞。男が精霊から加護を得た記録は、俺が知る限り一例もない。
 もっとも今では、唯我独尊、どこまでも我の道をゆく相棒を諦観の境地でもって受け入れているのだが。
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