拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 ここでもうまく立ち回れない自分自身に、悔しくて歯噛みした。
 するとその時、少し離れたところにいたラーラがトテトテとこちらに歩いて来るのに気づく。
「あら、ラーラ。いらっしゃい」
 ラーラを抱き上げようと手を伸ばした。ところが、なぜかラーラはそれを素通りし──。
『みゅーあ!』
 まるで『いじめちゃメッ!』とでも言うように、てしっ、てしっ、とファルザード様の脛とザイオンの横っ面を続けざまにパンチした。
「ぅおっ!」
『ニャッ!?』
 パンチとは言っても、所詮子ネコの繰り出した可愛いものだ。物理的なダメージはほぼゼロのはず。
 それなのに、なぜかふたりは地面に蹲って悶絶していた。
 ……あぁ、なるほど! やられたフリまでして、ラーラに付き合ってくれているのね。
 気のいいひとりと一匹の姿を眺めていれば、さっきまでの悲しい気分はいつの間にかほっこりと和やかなそれへと変わっていた。
< 67 / 307 >

この作品をシェア

pagetop