キラキラ王子様系男子の秘密を知ったら実はアブナイオオカミでした?!
掴む
先輩を好きと自覚してから、私は日々が変わってしまったのを感じる。いつも通り、昼間にキラキラな王子様をやってる先輩を見ても、満月の夜のことを思い出しちゃうし、二人きりでいる時間には、意識しすぎて顔を見えない。こんなこと、なかった。最初だってこんなに意識してなかったのに。

先輩と他愛ない話をしながらも、やっぱり意識してしまう。近寄れば、触れられたことを思い出すし、ドキドキがとまらない。伝わってしまえ、とも思うし、気付いてるなら答えてよ、と思う。そんなぐるぐるが続くせいでうまく取り繕うことが出来ない。

「ですよね、あの先生厳しいですよね」

「輝、どうしたの?」
先輩から一定の距離を取ろうとする私を、さすがに先輩も気にしているようだ。
「なんかしたかな、僕。いやしてるけどさ…」
先輩は明らかに自分に向けた溜息をつきながら
「もしかして、満月の夜の約束、嫌になった?」
と聞いた。
「そんなことはない!」
私は少し大きな声で答える。答えた後、恥ずかしくなる。
「いや、それが嫌とかではなくて」
口篭り、ぱくぱくとする私に先輩は
「なら良かった。じゃあどうしたの?何かあった?」

と真面目に聞いてくる。ここではぐらかしたら一生言えなくなってしまいそうな気がしたから。私は勇気を振り絞った。

「…、先輩は、」

先輩は私をじっと見ている。

「先輩は、わたしのこと、どう思ってるんですか」

すると、先輩が目を見開く。そんなことを聞かれると思っていなかったんだろうか。意表をつかれたようだ。そして、答えはすぐだった。

「…多分、君と一緒だよ」

私は、驚いてしまった。まさかそんな答えが返ってくると思わなかったから。一緒。つまり、先輩は、私の気持ちに気付いてる……。ずるい。ずるい返事だ。
「先輩って、ほんとずるいですね」
私は本音をぶつけた。すると、
「じゃあ、ちゃんと言葉と行動で表そうか?」
と言われる。私がえ?、と言った瞬間だった。近付いてきた先輩が私の耳に口を寄せる。

「好きだよ、輝」

そして、私の唇に唇を重ねた。初めてのキスだった。
「……!!」
唇を抑える私に
「嫌だったかな…」
と先輩が不安そうな顔をした。私は
「嫌じゃないです!」
と必死に言い、そのまま
「私も好きです!!」
と叫んだ。先輩は、笑い始める。
「声が大きいよ」
「あっ…」
夜の学校であることを忘れるくらい、私は先輩のことしか考えていなかった。
< 16 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop