姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
姉の許嫁との結婚
 半年前に結婚が決まったとき、『始まりはどうあれ、必ず百花(ももか)ちゃんを幸せにするよ』と雅貴(まさたか)さんが言ってくれた。

 十年以上、雅貴さんに片想いをしていたから、その言葉がこの上なくうれしかった。

 たとえ彼が私を愛していないと知っていても。

 
 私、三上(みかみ)百花と久宝(くぼう)雅貴さんの結婚式の日は、雨の多い六月とは思えないくらい空が晴れ渡っていた。

 きっとジューンブライドの由来となった女神のご加護を受けられたのだ。

 なんて実際は平年よりも梅雨入りが遅いだけ。太平洋高気圧の勢力が弱く、梅雨前線をなかなか北に押し上げないのが理由だとか。ロマンティックでもなんでもなく、ただの天候不順だ。

 それでもウエディングドレスを着ている今だけは、少しでもプラス思考でいたかった。

「それでは誓いのキスを」

 牧師の言葉に、私と雅貴さんは祭壇前で向かい合う。

 都内高級ホテルのチャペルでおこなわれている結婚式は指輪の交換を終え、ウエディングキスに差しかかっていた。

 ステンドグラスから降り注ぐ柔らかな光に包まれながら、雅貴さんは私の純白のベールを上げる。

 長身の雅貴さんは落ち着きのある黒のタキシードがとてもよく似合っていた。私は二十四年間の人生で彼以上に整った容姿の男性に出会った経験がない。六歳年上の彼にはおとなの色気があって、今日だけでも何度目かわからないほど見惚れてしまう。きれいな瞳に見つめられると、心臓がおかしくなったように騒ぎ出す。

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