意地悪で優しいあなたの溺愛

七夕祭り

左京くんへの気持ちに気づいたからといって、私の生活は大きく変わることはなかった。

左京くんへの気持ちを消そうにも、意図せずとも左京くんが視界に入ってしまって再び好きになってしまう。

チラリと目線を上げた先に七夕祭りのポスターが貼ってあった。

仙台七夕祭りだとか、そんなすごいお祭りじゃない。

地域の、昔からある小さなお祭りだ。

小さい頃に花梨と行った記憶がある。

今年も行きたいな、と思った。

「ねぇ、花梨」

隣を歩いていた花梨に声をかける。

「七夕祭り、一緒に行かない?」

「いいよ、…あ、右京くん達も誘わない?」

“右京くん達”はきっと右京くんと左京くんのことだ。

別に右京くんが嫌いなわけじゃないし、左京くんはむしろ好きだ。

でもこのメンバーでいくと必然的に花梨と右京くん、私と左京くんという構図が出来上がってしまう。

左京くんだって嫌いな相手と過ごしたくないだろうし、私だって今までと同じ態度で話せる自信がない。

「……花梨と、行きたい」

「…胡桃、怖がってちゃダメだよ。このままじゃ、ずーっと胡桃のテストの点数が低いままになっちゃう」

花梨は口では少しふざけたことを言いながらも、目は本気だった。

花梨が私にチャンスを与えてくれようとしている。

私はそのチャンスを無駄にしてはいけない。

「…わかった。でも、振られたら慰めてね」

「うん」

少しだけ頑張ろうって思えた。
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