シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~

11、とろける夜のデザート

「明人さん、どうですか?」

 私は目の前でカツ丼を食べる彼に向かって真剣に訊ねた。
 すると彼は食べながらうなずいて、笑顔で答えた。

「美味しいよ。卵の半熟具合も絶妙だね」
「ですよね! 蒸らすときにほとんど白身が透明なままにしておいたんです。温め直したときに固くならないように」
「温め直しもちょうどいい。出汁もそれほど濃くないからしつこくならないね」
「はい。いろいろ食べているときのことを考えて作りました」
「偉いね」

 明人さんがにっこり笑ってくれたので、私も思わず満面の笑顔になってしまった。
 だけど、そうじゃない。私たちは話し合いをしなければならないのだから。
 私がじいぃっと彼の顔を見つめていると、彼は急に食べにくそうにして箸を置いた。

「訊きたいことがあるなら言っていいよ。何でも答える」
「はい。ではまずひとつ。さっきも言いましたけど、芦田さんは明人さんの元カノさんですよね?」
「うん、そうだね。黙っててごめん。言う必要がないと思ったから」
「私も知りたいと思いませんでした。だけど、偶然秘書課の人たちが話しているのを聞いてしまったから。別にそのことはいいんです。ただ、芦田さんは私に接触して、明人さんのいろんな話をしてきたんです」

 明人さんは複雑な表情で私に「ごめん」と言った。

「彼女はまだ明人さんに未練があるんですね?」

 その質問に明人さんは返答せず、代わりに深く頭を下げた。

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