TOP SECRET〜この恋は、誰にも秘密〜


 場所柄周囲にはテレビや雑誌で紹介されるような店が数多くあるから同僚たちのほとんどは外食を選ぶけど、私は大抵昼食は弁当を作ってくる。だって、ランチに千円もかけるなんて勿体ない。『一円でも安く、けれど家族の体にいいものを』がモットーのお母さんは日々広告を赤ペン片手にチェックして、スーパーのはしごだって当たり前だった。


小さな会社で働いているお父さんの年収は裕福とは決して言えなかったけど、それでもお母さんがコツコツと貯めたお金で毎年家族旅行に連れていってくれた。


堅実な姿勢を間近で見てきたせいか、自然と節約するために頭を働かせることが楽しみになったし、貯金することは私にとって趣味というかライフワークの一環だ。


お弁当を食べていると机の上でひっくり返しておいたスマホが振動した。昼休みの時間帯に連絡してくる相手といえば大体が愛子だ。内容もいつもとほとんど変わらなくて、明日はお互いに休みだから集まろうと誘われた。


相馬愛子と知り合ったのは、ここでバイトしていた短大時代だ。常連客の愛子とは、本のことを話しているうちに直ぐ打ち解けた。


愛子は大学を出て百貨店に就職した。お互いに不規則な勤務という共通点もあって休みが合う日は外で会うことにしている。長居出来るカフェや天気が良ければ公園だったり、時々は紗綾の部屋で新しく見つけた本の話題を延々と語り合ったりもする。


 以前そのことを妹の美佳に話したら、『いい年して全く色気なし!!』とバッサリ言い切られたけれど、私はそんな休日の過ごし方にとても満足してる。

了解です。明日はどこに集まろうか?


愛子にそう返信して、午後からの仕事に向かった。

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