《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 思い切りひっぱたいてやろうと思った。
 なのに——華奢な手首はレオンの手に掴まれてしまう。

「驚かせたのなら謝る。だがエリー・ロワイエ……俺は、本当に」

 蠱惑(こわく)的なレオンの青い瞳が、今は途方もないほど心許なく揺れている。

 そんなレオンが継いだ言葉は突然、甲高い女の声に遮られた。

「レオン……? あなたがレオン・ナイトレイ!? ねぇ、そうでしょう? そうなんでしょうっっ、『魔術学園の貴公子』見つけたぁー!」

 書棚の合間からひょいと顔を覗かせた一人の少女は、無遠慮にずかずかと二人の間に詰め寄った。

 長い黒髪を揺らし、ルビーレッドの瞳を輝かせて。
 胸の前で手を組んで祈りのポーズを決め込み、満面の笑みを浮かべた少女はあっけに取られるレオンを(あが)めるように見上げる……どうやらエリアーナは彼女の視界に入っていないようだ。


< 137 / 207 >

この作品をシェア

pagetop