《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 小卓の上には、二脚の背高いグラスと高級そうなエチケットを纏った赤ワイン、水の入った硝子のピッチャー、角切りフルーツの盛り合わせと二本のフォークが三角にきちんと折られたナプキンの上に置かれている。

 アレクシスはワインのボトルをつかむと、慣れた所作でルビーレッドの液体をふたつのグラスそれぞれに注いでいく。
 とくとくと軽快な音が響いている。
 綺麗な朱赤の液体がグラスのなかで揺れるのを、エリアーナはただぼうっと見つめていた。

 ——アルマ様とふたりで、毎夜、こうやってお酒を嗜んでいるのかしら……。

 余計なことを考えれば考えるほど、《《この一夜》》を乗り切れないような気がした。
 どうにか冷静さを保とうと、無心を心がけながら目の前の風景をただ見つめていようと心に決めたのに。

「口をつけるだけでいいから、付き合って」

 アレクシスの薫りが、よく通る艶やかな声が、しなやかな手指の動きが、エリアーナの五感を否応なしに刺激してくる。

「……はい」


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