《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
「ねぇったら、聞いてるの? 今夜は不機嫌なのね。さっき届いた手紙のせい?」

 問いかけに応えることはなく、首筋に回された細い両腕に惑わされることもなく。
 アレクシスは無言でスツールを立ち上がる。

「……湯浴みをしてくる」


 浴室に入ると、力が抜けた。
 流れ落ちる水滴を頭上に浴びながら秀麗な面輪を両手で覆い、そのまま乱暴に濡れ髪を掻き上げる。

 愛おしいと、思えば思うほどに。

 ——ああ、なんで。
 なんで俺は……あんなふうにしかできないのだろう?
    
 手紙に綴られていた無機質な文字が、鳥の囀りのような愛らしい声となって誰もいない浴室に響いた。

『エリーは、もとのエリーに戻りたいです。
 旦那様と顔を合わせるのが辛いのです。
 離縁を申し出て、牢屋のようなこのお屋敷を出たいと思います。』

 離縁したいと言われても仕方がない。
 水浸しの床を見つめながら、心の中でつぶやいた——…


 …——すまない、エリアーナ。

 
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