憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
 苦しいと口にすれば助けてもらえるし、悲しんでいる航晴の力になりたいと思うのは当然のことでしょう?

 だって、私たちは――。

「でも、違ったのね。あなたにだって、私たちには理解できない葛藤や苦しみがある。二人で歩幅を揃えて歩かないと……壊れてしまうわ」
「ありえない」
「そうね。私もそう、信じているわ」

 夫婦になったんですものね。

 一度道違えた両親だって、再び同じ道を歩むことになった。
 何があっても、大丈夫。
 愛の力で乗り越えていけば、きっと……。

「戻りましょうか」
「……ああ。そうだな……」

 メイン会場のヘリポートから盛大な拍手が聞こえる中。
 ポケットの中で繋いでいた手を、ゆっくりと離す。

 できればその手を、ずっと繋いでいたかったけれど――もう少しだけ、秘密にしておきたかったの。

 堂々と愛し合うよりもコソコソ確かめ合うほうが、恋は燃え上がるっていうでしょう?

 私たちは踵を返し、ブースに戻る。

 縦横無尽に空を飛び回るブルーインパルスの姿はいつの間にか、消えていた――。

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