憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「き……っ」
「食べ残しが気になった」
「そんなの! テイッシュで拭けばいいじゃない! 何も、キスしなくたって……!」
「……今のは、キスのカウントでいいのか」
「な……っ!?」

 こちらを真面目な顔して見つめる航晴の瞳と視線を合わせ、墓穴を掘ったことに気づいてしまう。

 ――やらかした……!

 後悔したところで、一度口から出た言葉は戻らない。
 二の句が紡げない私に、彼は真顔で告げる。

「いくら許嫁といえども、合意なく唇を奪うのは問題だ。あえて、横に逸らしたが……。あれがカウントされるなら、遠慮はいらないな」

 ああ……勘違いなんてしなければよかった……。

 絶望感に苛まれるこちらの気持ちなど、考えていないのだろう。

 柔らかな空気を醸し出している航晴は、こちらの機嫌が持ち直すまで髪の毛先を指で弄ぶことにしたようだ。
 大きな手が髪に触れるたび、身体はその先に期待をして過敏に反応してしまう。

「……悪かった。落ち着いたら、声をかけてくれ。散策へ繰り出そう」

 取ってつけたような謝罪をされるくらいだったら、必要なかったのに。

 彼を睨みつけた私は、口元を覆い隠していた両手をテーブルに叩きつけると、乱暴な動作で椅子から立ち上がった。

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