憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
 ――どれほど時間が経っただろう。

 彼の温かなぬくもりを感じていると、泣きつかれてしまったようだ。
 うとうと、微睡み始めてしまう。

「千晴……?」

 静かになったのを見かねた航晴が名前を呼ぶ声が聞こえるけれど、返事をする元気すらない。

 ゆっくりと背中から離れ、こちらの様子を確認するために前方へ移動してくるような気配がする。
 ゴシゴシと涙を両手で拭い、心配をかけないように目線を合わせようとしたけれど――視線を彷徨わせている間に、彼は私を抱き上げてベッドに運んでしまった。

「今日のことは、気にしなくていい。キャプテンと奥様には、俺からもフォローを入れておく」
「でも……」
「お休み、千晴」

 どうやら、何を言っても聞く耳を持つ気はないようだ。

 ベッドに横たわり布団の中に潜り込むと、航晴が優しく髪を撫でつける感覚に眠気を誘われ――。

「おやすみなさい、航晴さん……」

 夢の中へ、身を預けた。

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