プルメリアと偽物花婿

7 (仮)恋人は期限付き

『写真見たい(^-^)!』

 追撃メッセージが送られてきた。ソファに座り和泉と一緒にそのメッセージを確認して、ため息をつく。

「どうしよう……」
「お盆、俺挨拶しにいきますよ」

 和泉はニコニコと言うけど、そういう問題ではない。

「俺と結婚した、じゃダメですか?」
「…………」
「先輩そういうところ真面目ですからねえ」
「さすがに嘘は……」
「嘘なんですか?」

 ソファで隣に座った和泉は私の顔を覗き込んでくる。

「ひどいなあ、一応(仮)とはいえ、恋人なのに。嘘にしなければいいですよね? 先輩、本当に俺のこと「好きになりたい」って思ってくれてます?」

 軽い調子で和泉は言うけど、言ってることは間違ってはない。

「……うん。でも、まだ結婚しているわけじゃないから」

 結婚式はしてるんだけどね。……順番が無茶苦茶だ。結婚式はしているけど、結婚はしていないし、正式に付き合っているわけでもない。

「いつか結婚するなら、嘘にならないですよね」

 今は結婚していなくても、本当に結婚するなら嘘にはならない。
 
 だけど……恋というのは不確かだ。永遠に続くものではない。
 山田さんとの結婚は、利害が一致していて、結婚がゴールだった。だからある意味仕事のように、目的に向かって着々と進めていけばいいだけだった。

 だけど……恋をするのは怖い。また傷つくのが怖い。
 このまま和泉に甘やかされて溺れて、和泉がいないとダメな私になるのが怖い。そうなったときに和泉がいなくなってしまったら……誰かを好きになって傷つくのはもう嫌だ。
 そうやって十年程、恋というものに気づかないようにしていたのに。もう揺さぶられたくない、本当は。
 
「だって、和泉もいつかは気持ちが変わるかもしれないよね」

 小さな声が漏れる。
 和泉の気持ちが私から離れた時に、私がどっぷり和泉に浸かってしまっていたら……それが怖くて、自分の気持ちから逃げている。好きになりたいというより、むしろ――。
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