プルメリアと偽物花婿

「私の気持ち全部ばれてそうでやだ」
「あ、ちょっと素直になってきた。先輩の気持ち全部はわかんないですよ、だから教えてください」
「和泉のこと好きになりたい、じゃなくて、好きになりたくない、かもしれない」

 好きになりたくない。だって取り返しがつかなくなって、傷つくのが怖いから。
 私の正直な言葉に和泉は声を出して笑った。そして私の顎を捕まえてキスする。

「あー本当に可愛い。それってもう好きって言ってますよね」

 返事をする間もなく、次のキスをされる。……溺れたくない。なのに甘い優しさが私を沈めてくる。

「そうやって逃げたくなるくらい俺のこと好きなんですね」
「勝手に決めてる」
「だってそうとしか聞こえないですよ。怖がらなくてもいいですよ」

 次のキスを落とされて。息をする間もなく、次々と甘さが降ってきて。頭がぼうっとしてきて、身を委ねそうになる。

「お、おしまい……!」

 身体をよじって両手で和泉の胸を押す。現れた和泉の顔はやっぱり微笑んでいた。

「えー? 今なら好きだと自覚してくれるかな、と思ったんですけど」
「…………」
「流されてくれたらいいのに」

 私は机の上に置いてあるビールをぐびっと飲む。冷たいビールが喉に流れると、熱くなっていた頭が少し冷やされる。

「と、とりあえずまだ(仮)だから、親には嘘をつけないよ」
「真剣交際になったらいいわけですね」

 和泉は全然気にする様子もなく笑顔のままだ。

「お盆まであと一カ月半あります。それまでに決めてください。(仮)を外して本当の彼女になってくれるのか、やっぱり俺を恋人と思えないかどうか」

 和泉は私の髪の毛を一房取ってキスをする。
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