魅惑の絶対君主


差し出されるので、反射的に受け取る姿勢を取ってしまって。

指先がぶつかった瞬間、心臓が跳ねた。



「ひゃあっ」


うっかり手を離せば、本がすとんと床に落っこちる。


「ご、ごめんなさいっ!」


慌ててかがみ込んで、気づく。



「あれ……? 『スウェーデンの森』……村上春人……」


著者名に既視感を覚えて二度見した。



「この人って有名な小説家……」


試しにめくってみると、目が回りそうなほどびっしりと文字の羅列。

これって文学小説だよね?



「うぅ……嘘つかないでください、エ口本なんて」

「お前がどんな反応するかなあと」


「ひぃ……」

「それにこの本、性描写多いからあながち嘘でもないよ」


「え、そうなんですか?」

「それはいいとして。冬亜ってびっくりするくらい耐性がなさそうだね」



わたしが拾いあげたそれを相楽さんが受け取る。

そのとき、また指先が触れてびくっとした。

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