緒臣くんのキケンな誘惑。
誘惑
あれから一ヶ月。
私はいつものように朝「行ってきまーす!」と玄関で大声を出し家を出る。
家を出てすぐの角を曲がると。
「おはよう緒臣くん!お待たせ」
「おはよう紫夕」
緒臣くんが壁に寄りかかって私を待っていた。
付き合い始めてから毎日私と緒臣くんは一緒に登校している。
この角が待ち合わせ場所で時間も決めた。
家の前だとお母さんに騒がれるから……とこの場所に決めたのだ。
「行こう」
「うん……!」
緒臣くんはいつも、歩き始める時に私の手を繋いでくれる。
一ヶ月経っても慣れないものは慣れなくて、照れながら手を握り返した。
「今日いつもと違う?」
「え?あ、前髪長かったから巻いてみたの!よく分かったね」
「可愛い」
「…っ、そ、うかな……」
ふわっと微笑んだ緒臣くんに朝から心臓がうるさく鳴っている。