もう誰にも恋なんてしないと誓った

9 真面目に付き合うなら◆アイリス

 わたしの涙を久しぶりに見たキャメロンは可笑しいくらいに戸惑っていた。
 
 頭を撫でていた彼の手は、毛先から肩へと移り、そして背中に掌を当てていて……
 その行為は無意識だったのか、気付いてから慌ててわたしから離れた。


「ご、ごめん……あれだよな?
 アイリスにとって大事な友達を、優良物件なんて言ったから怒ったんだろ?
 失礼だった、反省してます。
 悪かったよ」
 
「……」


 わたしのことを友達思いな女の子だと誤解しているようなキャメロンに否定はしなかった。

 この涙はシンシアを思っての涙じゃない。
 子爵位を、ひいてはわたしのことを、貴方が下に見ているようで辛かったからだとは言えなかった。



「今までアイリスが友達を紹介したいと、言ってきたことはなかっただろ。
 アイリスには知り合いは多いのに、高等部で同じクラスになったばかりのカーライル嬢とあっという間に親友になって、俺に薦めてきたのだから、彼女はすごくいい子なんだと思う。
 それなのに、俺は勤めに出るより婿入りの方がいいからとか、優良物件なんて言って悪かった」

「……シンシアは男性にあまり慣れてなくて……
 だけどキャムだったら、安心だと思って……」

「お前がそんな風に俺を信頼してくれていたなんて、嬉しいよ」
 


 ……キャメロンだったらシンシアのことを。
 シンシアだったらキャメロンのことを。


 この時は、任せられると思っていた。



   ◇◇◇



 2、3日して改めてキャメロンからシンシアを紹介して欲しいと頼まれた。

 学院の休み時間に顔合わせをするのではなく、休日に会いたいと言われた。

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