もう誰にも恋なんてしないと誓った

14 ただ会いに来た◆アイリス

 翌日の日曜日、朝食後にオースティンお兄様が領地へ戻られると聞いていたので、午後からキャメロンに会いに行くことにした。


 セーラ様から、お兄様に言われたことは気にせずに遊びにいらっしゃいとお招きされたこともあるし、キャメロン本人からも話を詳しく聞きたかった。


 それは、昨日初めてシンシアを邸に連れてきて、彼女に対する皆様の印象はどうだったか、と言うこと。
 わたしが紹介して始まった交際だったから、正式な家同士の縁談ではないので、ご家族に会わせたのは昨日が初めてだろう。

 
 セーラ様は会う前からシンシアにはいい印象を持っていらっしゃらないけれど、キャメロンにははっきり反対だと言っておられないのだろうか。


 それに……お兄様は楽しそうにしていらした。
 あんな打ち解けた表情のお兄様を見たのは久し振りだ。
 それがわたしに向けられたものじゃないのが、腹立たしい。


 多分……ううん、絶対にシンシアの方から行きたいとねだって……
 それでキャメロンが断れなくて連れてきたんだ……
 


 シンシアに居場所を奪われてしまうことに、わたしは焦っていた。
 それが顔にも出ていたのか、昼食を終えて出掛けようとすると、2階から降りてきたダレルに声を掛けられた。


「キャメロン様に会いに行くの?
 オースティン様から、もうひとりでは来るなと忠告されたんだろ?」


 
 何なの、弟の癖に偉そうに。
 あれこれうるさい母が朝から父と出掛けていて、邪魔されることなく出掛けられると思っていたのに。


 あれは忠告なんかじゃない、まるで脅迫だった。
 ダレルにまで知られているとは思わなかった。
 あんたもお母様と同じで、お兄様の肩を持つの?


「……お兄様が勝手に言ったんだって、セーラ様が仰っていたわ。
 これからも遠慮なく会いに来て、って」

「勝手に言ってるのは、夫人の方だろ。
 あのひと、ちょっとおかしいから、真剣に受け取るなよ」

「あんた不敬よ!」


 ダレルはまだ子供だと言え、侯爵夫人に対しておかしいなんて言ってるのが知られたら、どうなるか!



「不敬であるものか、最近は母上だって、あのひとから距離を取ってるのを知らないのか?
 いまだに侯爵家には相応しくない言動をするひとじゃないか。
 無責任な口車に乗って、馬鹿なのか。
 オースティン様に睨まれたら、マーフィーは潰されるんだぞ」


 1歳上なだけでも、わたしは姉なのに。
 おとなしい弟だと思わせて、ずっと心の中では、わたしのこともセーラ様のことも、馬鹿にしていたの?


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