もう誰にも恋なんてしないと誓った
 学院内で盛るなんて!

 目の前のふたりに吐き気を覚えた。



 間違った、直ぐにわたしが声をかけるべきじゃなかった。
 このまま行為がエスカレートするのを確認して、そっと教師を呼びに行き、恥知らずなふたりを白日の元に晒せば良かった。

 そうすれば社会的に処罰出来ただろうに。
 わたしは学院内の環境を整える美化委員なのだから、教室で(準備室だろうが)不埒な真似をするふたりを……



「シンシア……どうして、ここ……今日は委員会があるって……」


 わたしに幸せになれると錯覚させた男が、わたしの目の前に立ち塞がった。
 本当の恋人アイリスの乱れた姿を、わたしの目に触れさせたくなかったのだろう。

 
 わたしは無言で、目の前の邪魔な男の身体を押し退けた。
 わたしの力なんかでは、男性をどうこう出来るわけないのだけれど、あっけなくキャメロンは身体を退いた。



「教えて、マーフィー様。
 いつまで、黙っているつもりだったの?」

「……」

「それとも元々そういう関係だったのを、黙っていて。
 ふたりでわたしを騙したの?」

「……」

「違う!」


 アイリスは答えず俯いていたが、横からクズが代わりに口出しをする。
 

「騙すつもりなんてなかった!
 君と婚約したかったのは本気だった!
 だけど……あぁ、シンシア、俺の話を聞いて……
 アイリスは悪くない!
 俺がいけなかったんだ、だから、責めるのは俺にしてくれ!」


 クズな男だと思うが、彼女を庇った所は褒めてもいい。
 だが、今更この男に掛ける言葉はない。
 わたしにこんなクズを紹介したのは、親友だったアイリスだ。
 だから先ず話す相手はアイリスだけ。
 


 キャメロン、もう今は貴方を見逃してあげる気なんて無い。
 慌てないでおとなしく、自分の順番を待っていたらいいの。


 ごちゃごちゃとうるさく言い訳する彼を無視して、わたしはアイリスに一歩近付いた。

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