御曹司は高嶺の花に愛を刻む
「綺麗だな」

レースのハンカチが?
だよね?

彼が、私を見て妖艶に微笑む。

「受け取らないから、いらないのかと思った」

私は、警報が鳴り続けていて、体が動かない。

"見た目に騙されるな"
"見た目を武器にする男は気をつけろ"
"父のように自分を捨てるかもしれない"


そして彼は、そんな私を見てフッと優しく微笑んだ。

「そんなに、唇かんだら血が出る」

そう言って、ゴツゴツした指を私の唇にそっと添えた。

「俺が、怖いか?」

怖い?怖くはない。

私は首を横に振った。

でも、この胸の高鳴りは何かわからない。
こんなの知らない。
私も、戸惑ってる。


彼は、また優しい眼差しで私を見つめる。

「そうか」

もう、周りの音も人の視線も何も感じない。

この場には、彼と私だけしかいないような、そんな錯覚をしてしまう。

飲み込まれる。
< 22 / 228 >

この作品をシェア

pagetop