御曹司は高嶺の花に愛を刻む
会議室にひとり残り、菜由を思い出す。

朝から、笑ったわ。

あいつも、すげー慌ててたけど大丈夫だったのか?

身体も。無理させたよな?


菜由に連絡しないと。
携帯を出して、菜由の番号、、、

そして気づく。




俺、連絡先聞いてねぇ!!





最悪だ。
気付かなかった。

「はぁー」

だだっ広い、会議室に俺のため息が消えて行った。

こんなに間抜けだったか?

でも今思い返せば、連絡先なんか聞く暇もなかった。

そんな隙さえ、見せてくれなかった。
というか、余裕が無かった。

あんなに必死になって。

何とか連れ出して。

笑える。

途中のコンビニで、買い物をした時だってずっとソワソワしていた。

少しでも目を離せば、どこかに消えて行ってしまいそうで。



本当は家に連れて帰りたかったが、待てなかった。

会場の近くのホテルのスイートに入ったら尚のこと。

俺は完全に、菜由しか見えてなかった。



アイツは何もんだ?
< 49 / 228 >

この作品をシェア

pagetop