気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「颯斗さんが変なことを言うから驚いちゃいました」
 少し気まずくなった空気を払拭したくて、咲良は何でもないように言う。
 颯斗がいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「もしかして、期待した?」
「ま、まさか!」
 心を見透かされたような気がして、咲良は慌てて立ち上がる。
「私、もう寝ますね。お休みなさい」
 自分のベッドに入り、頭まで布団をかけた。
 颯斗が小さく笑いながら、布団な中で丸くなっている咲良に声をかける。
「お休み、咲良」
 衣擦れの音がして彼が自分のベッドに入ったのが分かる。
(颯斗さん、気を悪くしてないかな?)
 動揺したからと言って、子供っぽい態度だった。
 でも今更布団から出ても、何を言えばいいのか分からない。
 咲良はぎゅっと目を閉じた。
 その夜は、なかなか寝付けなかった。
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