拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
「わっ!」

私の腰が、崇臣さんの長い脚とぶつかる。どうやら、抱き寄せられたらしい。

「実は私、添嶋崇臣は琶月さんと予てからお付き合いをしております。彼女のセンスと芯の強さに私が惚れ込みました。いつか、プライベートだけでなく一緒に仕事もしたいと話していたところ、このような形になりました」

驚き見上げると、崇臣さんは「申し遅れましたが、私はSJHの副社長をしております」と何でもないことのように付け加える。

「この工房の刺繍技術は素晴らしいと、琶月は常々言っています。私も実際に工房で作られたドレスなどを拝見して、ぜひ一緒にお仕事させていただきたいと思いました」

そういう設定!? と思っている間にも、彼は続けた。

「特に以前この工房で作られたエンペラースワン。あのシルクのオーガンジー生地に縫い込まれたエンブロイダリーレースは見事でした。立体的に仕上げた刺繍が、寸分も狂うこと無く小さな花を描き、遠くからは番の白鳥のモチーフをぼんやりと映し出す……素人ながらに、惚れ惚れしてしまいました」

エンペラースワンはあのショーウィンドウに飾ってあったドレスだ。まさか、そこまで見ていたなんて。

内心飛び跳ねてしまいたくなるほど嬉しい。
心の友を見つけたような幸せな気持ちで従業員の方を見ると、なぜか皆ぽかんと口を開けて彼を見ていた。

「服飾バカップル……」

誰かがポツリとそう言った。
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