岩泉誠太郎の結婚

突然のプロポーズ

 かなりギリギリになってしまったが、予定通り、出張中に安田さんの恋人になることができた。

 時差ぼけを考慮して明日は休暇を取っている為、土日を併せて三連休。多少仕事をしなくてはいけないだろうが、この三日で安田さんとの関係をより確固たるものにするつもりだ。

「安田さん、疲れてるところ申し訳ないけど、少しいいかな?」

 成田に到着後、スーツケースを回収して小野寺さん達に挨拶をし、早々に逃げ帰ろうとしている安田さんを呼び止める。

「じゃあ、私達はここで失礼するよ。誠太郎君、安田さん、よい週末を!」

 事情を知ってる小野寺さんが相変わらずにやつきながら部下を連れて去っていき、安田さんはそのうしろ姿を恨めしそうに見送っている。

「俺たちも場所を移そう」

 そう言って、事前に手配しておいた空港近くのホテルに移動する。いきなりホテルに連れ込まれた安田さんが激しく動揺していて可哀想だが、彼女をこのまま帰すわけにはいかない。

「いきなり襲ったりしないから、そんなに警戒しないで?とりあえず、これからのことをちゃんと話し合いたいんだ。俺とのことで安田さんに危害が及ぶのは、絶対に避けたいしね」

「私も、ちゃんとお話したいと思ってました」

 完全に逃げ腰だった安田さんは、ここが話し合いの場だと認識するとようやく落ち着きを取り戻してくれた。

「もう一度確認だけど、安田さんも俺のことが好きだから、恋人になるのを承知してくれたと思っていいんだよね?」

 半ば強引に了承をもぎ取った自覚があったので念のため確認してみると、一瞬で彼女の顔が赤くなった。照れているのだろう、かわい過ぎる。

「その反応は好きってことでいいのかな?どうしよう、本当に夢みたいだ。凄く嬉しい‥‥」

 今すぐ抱き締めたいが、我慢しよう。

「それで今後のことだけど、本当は安田さんが俺の恋人だって堂々と周りに自慢したい。でもそんなことをしたら、多分安田さんが色々と嫌なめにあってしまうと思うんだ」

「そうですね。多分というか、絶対そうなると私も思います」

「やっとの思いで君を手に入れたのに、デートはおろかまともに話すことすらできない気がして‥‥そんなの我慢できそうにない」

 彼女が俺とのことを検討する際、周囲から反発されるであろうこともネックになっていたのかもしれない。何かを想像したのか、安田さんは眉を寄せて難しそうな顔をしている。

 はあああ‥‥そんな表情もかわいい。
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