辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

失踪した王女殿下



 ガタンガタンと揺れ動く……何かに乗せられているのかしら…………私は一体どうして――――――


 少しづつ意識が戻ってはきたものの、まだ頭はボーッとしたままだった。この揺れが若干心地良いような…………次の瞬間ガタンッと大きく揺れて、驚いて目が覚めた。


 目の前は真っ暗――――明らかに舞踏会じゃない。私はステファニー様とサロンでお喋りをしようと、先にサロンに行っていたはず。そして…………そこに運ばれてきた給仕係の男性が入れたお茶を飲んだところで、男性がそのお茶の茶葉はリンデンバーグ産だと告げて――――


 きっとあのお茶には眠り薬が入っていたに違いない。それを飲んでしまって意識が飛んだのね……手は縛られ、体は頭まで布でぐるぐる巻きにされている。


 つまり身動き出来るような状態ではない、という事…………私はどこに連れて行かれるのかしら………………私が意識がなくなる寸前に「さぁ、母国へ帰りましょう。国王が待っています」という声が聞こえた気がする………………まさかリンデンバーグ?

 
 どうしてリンデンバーグが私を攫う必要があるの?


 もう私は用済みのはずなのに――――



 そんな事をモヤモヤ考えて身動ぎしていると、誰かが私の顔にかかっていた布を取り払ってくれた。


 その人物の顔を見上げると、私は驚いて目を見開く…………目の前に誘拐犯と同じ服装をしたレナルドがいたのだから。
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