辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 王妃殿下は激昂し、私を怒鳴りつける。でももう幼い子供ではないから、萎縮したりはしないわ。私は私を大事に想ってくれる人達がいる、その事が何よりも私に勇気を与えてくれていた。


 「……お母様は最後まで、ボルアネアに帰りたいと日記に書いていました。そうさせまいとしていたのは、お父様ではないですか……私が政治の道具として必要になったから、今度もまたボルアネアから連れて来たというわけですね?私を条件にまたボルアネアを脅す気ですか?政治の主導権をとりもどそうと……?」

 「…………………………」

 「そんな事で国が再建出来る状態ではない事が、お分かりになりませんか?」
 

 また戦になったら、兵達も犠牲になってしまう。この城にいるのは国に忠誠を誓っているわけではない、ただの雇われ兵だろうから……この人達にとってはどうでもいい事でしょうけど。


 「…………自身の欲望の為にお母様を攫ってずっと幽閉し、故郷に帰る事も叶わず朽ちていったお母様の無念を考えると……私がこの国を救おうだなんて思うわけがありません。ここにいる皆さま方で何とかするべきですわ……」

 「随分な口をきくようになったわね、私たちの顔を見てはただ怯えていただけの小娘が」


 側妃の一人が昔を思い出しながら口を出す。私を盾にお母様を傷つけた――――


 
 「……お前の母親もバカな女よ。お前の事など考えなければ母国に帰る事が出来たというのに……ふふっ…………お前を母親から引き離すために連れていった時のあの女の顔は傑作だった」


 王妃殿下の顔は愉悦に歪んでいた。私をお母様から引き離す為に?そんな事があったなんて日記には…………まさかあの破られた日記の跡は………………
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