辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

ちょっとした空回り


 とても気持ちのいい目覚めだった。抱き心地も良くていい匂いがしていて…………この匂いは私の大好きな匂い…………そう、テオドール様のだわ……隣で寝ているのだからテオドール様の匂いがするのは当たり前なのだけど、どうしてこんなに近くから感じるのかしら…………


 そんな事を寝ぼけ眼で思っていただけで、まさか本人に抱き着いていたなんて思っていなかったの――――



 ――穴があったら入りたい――――――




 「本当――に申し訳ございません」

 「いや、いいんだよ。昨日は重労働だったし疲れていたからね、ぐっすり眠っているんだろうって分かっていたから」


 私はテオドール様の隣で正座をして頭を下げていた。テオドール様は優しく許してくださったけど、私は自分のやってしまった事が恥ずかしすぎて、自分を許せないでいる…………なんて事をしてしまったのだろう。

 いくら夫婦だとは言っても、テオドール様の優しさに甘え過ぎだわ。夢の中の事と勘違いしていたとは言え、抱き着いてスリスリして……私の中でこんな破廉恥な欲があったなんて……………………テオドール様大好きって言っていたのも聞かれてしまったかしら…………聞かれていないといいな。


 そんな願望を抱きながらテオドール様をチラッと見ると、照れているようなお顔で優しく笑ってくれていた。



 ひとまず嫌われてはいないみたい…………良かった。
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