制服レモネード
「わ〜綺麗〜」

2時間ほど車を走らせて、窓から見えていた景色が、都会の建物から、綺麗な緑色の葉をつけた木々へと変わってゆく。

離れたところにポツポツと家が見えたり、田んぼや畑が広がっている。

「綺麗、ね。昔の俺はこの景色が憎くてしょうがなかったよ」

ここにくる少し前に通った街で、役場や小学校、矢吹さんの通ってたっていう高校も見かけた。

矢吹さん、田舎の高校に転校したって言っていたけど、学校がある街からも少し距離のあるお家に住んでいたんだな。

田舎の中の、田舎。

都心から少し離れた住宅街にしか住んだことない私にはだいぶ新鮮で、ワクワクする。

「夜はカエルがうるさいし、バッタはでかいし」

ため息混じりにそういう矢吹さんだけど、その横顔はちょっと懐かしさを喜んでるようにも見えた。

「今も、憎い、ですか?」

「いや……」

矢吹さんはそれだけ言うと、少し考えるそぶりを見せてから再び口を開いた。

「今は、懐かしいなぁって純粋に思う。あとは、昔の自分思い出して、ガキだったなぁって」

街を走っていた時よりものんびりとしたスピードで運転する矢吹さん。

前にも後ろにも、走る車は見当たらない。
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