【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?

 落ち着こうか——。
 その声を聞いた瞬間に、なぜかわからないけれど、バクバクと壊れそうなほど鳴っていた心臓がストンと落ち着く。
 国王陛下は、わたくしのことを怒っていない?
 不思議だった。リオ・ナバ国王の顔には笑みのようなものさえ浮かんでいる。大声で怒鳴られても仕方がないのに、どうして穏やかなんだろう? 
 頭の中は大混乱だ。もしかしたらちゃんと伝わっていないのかもしれないと思った。だからもう一度震える声で言った。
「あの⋯⋯、その⋯⋯。わたくしは⋯⋯、わたくしは、⋯⋯偽者なんです! 偽者の花嫁なんです!」
 冷たい大理石の床に両手を投げ出してひれ伏す。
 すると、すぐに逞しい腕が伸びてきて、ぐいっと力強くひっぱりあげられてしまった。
「深呼吸をして——」
「え?」
「大きく息を吸おうか? そうすれば落ち着くだろう」
 言われるままに大きく息を吸った。かなり落ち着いてきたけれど、国王の切れ長の目と視線がピタリと合うと、また心臓がドキドキと鳴り始めた。
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