素直になれない少女は学園トップと恋をする

入学式



「なち、起きなさい。遅れるわよー」


そう声が聞こえた気がした。

体を起こすとそこには殺風景な私の部屋があるだけ。

かわいいともかっこいいとも言えない普通の部屋。

その中にポツンと母の写真が飾ってある。


「おはようお母さん。」


私は、有栖 那智(15歳)

中学生のころに母を亡くし、父はとは縁を切った。

今は母方の親が育ててくれている。

そして私は今日4月9日から高校1年生だ。

私が今日入学する高校は南城高校。

偏差値は低いが、顔面偏差値が高い。

おまけに、制服もかわいいため意外と人気の高校である。


「おばあちゃんおはよう。」


「おはよう。今日から学校でしょう。」


「うん。行ってくるね。」


「行ってらっしゃい。」


外に出ると満開の桜が入学する私たちを祝うように

風に揺れている。すると、


「なちー、おはよう。」


「おはよう。なな。」


彼女は、私の親友の

如月 七菜 (15歳)

私と同じく今日から南城高校に入学する高校1年生だ。


「七菜は相変わらずかわいいね。」


「もー、そんなこと言ってくれるのは那智だけだよ~」


そんなことはないはずだ。

七菜はとてもかわいくて中学の時から男子にはモテていたし、女子にはちやほやされていた。

私と町へ遊びに行った時もスカウトされていたし、告白されたこともある。

でも、彼女は自分のかわいさに気づいていない。

それに比べて私は…


「本当にかわいいよ」


「ありがとう。でも、那智もかわいいんだからね!」


「うん…」


そんな感じで話しているとあっという間に学校へ到着してしまった。


「同じクラスだったらいいねー」


「そうだね」


私も七菜がいてくれると安心だなーと考えながら、

校舎の入り口に貼ってあったクラスの名簿を見ているとさっそく自分の名前を見つけた。

私は1-B だった。

そのまま下に視線を滑らせていくと七菜の名前も見つけた。

同じクラスだ。ほっとしながら七菜に声をかける。


「七菜の名前あったよ。」


「えっ!どこどこ?那智とおなじクラス?」


「うん。おなじ」


「やったー。早く教室いこいこ~」


「うん。」


教室についてから七菜と話しているとあっという間に時間がたち

入学式が始まる時間になった。

担任らしき人が来て並ぶよう指示があった。

体育館に入ると前のほうに椅子が用意されており自分の組のところに座った。

この高校では、入学式に在校生代表以外の生徒は参加しないらしい。

入学式の内容としては、校長からのあいさつや代表あいさつそれぞれのクラスの担任の紹介、

その他の先生の紹介、これからの方針の説明などつまらない話ばかりだった。

ただ、壇上に上がった代表の先輩と偶然にも目が合ったとき、

なぜかとても驚いた顔をされた気がするのだ

だけどとくには気にしなかった。

「なんか、思っていたのと違ったねー」


「うん、在校生が参加してないのはびっくりだね。」


「てか、あの先輩めちゃくちゃかっこよくなかった!」


「そう?私はそこまで…」


「えぇー!」


教室に戻ってからは、軽く自己紹介をして、教科書が配られて

帰る時刻になった。


「なな、帰ろう。」


「ちょっと待ってー。まだ準備ができてない~」


「じゃあ先に靴箱に行ってるから。」


「うん、わかった。おいてかないでよね!」


「うん。ゆっくりでいいからね。」


そう言って、靴箱に向かっていると窓から心地よい風が吹いてきた。

外を見ると晴天の中鮮やかな桜が咲いていてとてもきれいだった。


「わぁ、きれい。ゔっ。」


よそ見をしていたせいで誰かにぶつかってしまった。


「ごめんなさい!大丈夫ですか!」


「あぁ。そっちこそ大丈夫か。」


これが美しい悪魔との出会いだった。

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