先輩、恋してください。

先輩は、難攻不落

***



先輩はどうやら、
私の気持ちに気がついているらしい。



『あ、こんにちは!先輩!』



昼休み、偶然訪れた図書室
そこでばったりと先輩に遭遇
想いを知られているならもう、
何も隠す必要はないって、そういうことだから。



「……またお馬鹿ちゃんか」

『はい!私嬉しいです、先輩に会えて』

「ほんと、俺のこと好きだね」



今日も私、ノックアウト寸前。
呆れ顔、鼻から軽く息を吐いて笑う先輩
たまらないくらい、私のタイプ。



『はい、好き、ですね』

「ね、見てればわかるよ、本当わかりやすすぎ」



先輩が、見ていた本を棚に戻して私に向き合う
少し屈んで、同じ目線になって、
だんだんと、また近付き始めた距離



吸い込まれそう、心臓がバクバクとうるさい
見つめられて、体温が上がってきたその時、




「………名前は?」




先輩が、少しだけ首を傾げて私に聞く。
まったく予想していなかったそんな質問
馬鹿みたいに、え?と間抜けな声が出る



「名前、なんていうの?君」

『………深田…は、初音、です、』

「ふうん、初音ね」

『えぇ……』



あっという間に呼び捨てされた名前
驚きすぎて、ナチュラルにモテ男すぎて、
思わずまた間抜けな声が溢れちゃう



先輩が、そんな私見て
愉快そうに口角を緩める




ねえなんでこんなにかっこいいのかな…
笑顔は本当に甘いのに、行動がクールで、
本当に本当に、魅力的な人。




「初音、ここにいたのかよ」

『え、よっちゃん?』



その時、私を探しにきたよっちゃん
私の幼馴染は、いつも私を探している気がする。



「もう休み時間終わるし、戻るぞ」

『あ…はあい』



その時、先輩とよっちゃんの目が合う



「………仲良しだね、君たち」

「………まあ、それなりに。ほら行くぞ」

『よっちゃん痛い!そんな引っ張んないでよ!あ〜先輩、また!!』



私の腕を強く引いて、図書室を出ていくよっちゃん
先輩はそんな私たちを興味なさそうに眺め、
よっちゃんは教室に戻るまで何もしゃべらなかった。
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