青春は、数学に染まる。 - Second -


その後、先生と有紗は私の傷口を消毒してくれた。





「二人共お送りします。急いで片付けるので、少々お待ち下さい」


仕事を片付けるまで私たちを数学科準備室で待たせ、家まで送ってくれた。







「いや、真帆!! どうしたの!?」
「お母様、ご無沙汰しております…」
「真帆のママ…私が付いていながら…ごめんなさい」


先生は有紗よりも先に私の家に来た。
事の経緯を2人が説明する為らしい。



お母さんは私の傷を見て、悲鳴にも近い声を上げた。
そして、その声を聞きつけたお父さんも外に出てくる。



「裕哉くんに有紗ちゃんまで…。というか真帆…どうした……」



先生と有紗が今日遭ったことを説明してくれた。





その話を聞いた両親からは怒りが滲み出ている。





「……以上が経緯です。僕の身近でこんなことを起こしてしまったこと、誠に申し訳ございませんでした」
「私からも。本当、ごめんなさい…」
「………いや、裕哉くんも有紗ちゃんも悪く無いよ。寧ろ、ありがとう。真帆を見つけてくれて、助けてくれてありがとう」



深々とお辞儀をするお父さん。





何だか、申し訳ない。
私のことでこんなにも色んな人がそれぞれの思いを抱いてくれているなんて。





「…しかし…今もいるのね。暴力で解決させようとする人」
「本当…うちの真帆になんてことしてくれたんだ…」



先生はお父さんとお母さんを交互に見て、小さく頷いた。




「今回のことは学校内でのことですので、学校として責任を持って対処致します。加害生徒を必ず突き止め、相応の処分を致します。その後、結果をまたご報告させて頂きますので何卒御理解の程、宜しくお願い申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」



そう言って綺麗なお辞儀をする先生。









…先生は、何も悪くないのに。







やり切れない感情でいっぱいだ。














「いや。もう、裕哉くん。先生モードはいいから」


「……え…」





お父さんは先生に近付いて、そっと肩を叩いた。




「真帆を介助して、ここまで送り届けてくれたのは”早川先生”ではなく、裕哉くん自身だろう?」




先生に掛けられたその言葉に心底驚いた。

そして、先生も驚いた表情をした後、軽く唇を噛んで頷く。




「……はい。…勿論です」
「…だろう。なら、ここでは“先生”でいる必要はない」



お父さんのその言葉に、有紗が号泣し始めた。



「…何で、的場さんが泣いているのですか…」
「………っ」
「有紗…」




有紗は首を振りながら無言で私に抱きつく。



「色んな感情が交錯して…分かんない…」






そんな有紗を見て、私も先生も…みんなが泣いていた。









< 32 / 95 >

この作品をシェア

pagetop