陰陽現代事情

第3話 左上位の世界観

 都内・某小学校-。 
 この学校には、今、注目されている一人の少年がいた。
 4年生になる、安倍 晴明(あべ はるあき)だ。
 彼は先日、“超能力者大集合”というテレビ番組に出演し、並外れた力を見事に発揮した。離れた場所から、テーブルの上にあるグラスに向けて呪文を放つと、グラスは粉々に砕け散るのだった。晴明の噂はたちまち学校じゅうに広まり、一躍クラスの人気者になったというわけだ。クラスメートが口々に、スプーンを曲げてくれ、花瓶を浮かせてくれなどと注文するので、晴明も人気を取ろうと、次々にやりこなしては、みんなを驚かせていた。
 晴明が右手に握る鉛筆を、じっと睨み続けている。すると突然、鉛筆は真っ二つに割れ、上の部分が机の上に転がり落ちた。クラスメートたちの間に、うぉぉ、という歓声がわき上がった。
「すごいなお前、生まれつきそんな技を持ってるのか?」
 クラスメートの一人が言った。
「生まれつきじゃないさ。父さんに教えてもらったのさ」
 晴明は、さらりと言った。
「と、父さんって・・・・お前、あの噂の・・・・?」
「や、やめてくれよ。その話はしないって約束だぞ!」
 晴明は急に顔色を変えて言った。

 晴明は、父親の話題に触れられることを嫌っていた。父親の事でいつもとばっちりを受けていた晴明。
 その父親は今、政治活動のため、メンバーと共にアメリカに行っていた。
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