陰陽現代事情

第5話 自称、市民の代表

 終戦から四十年余。日本は高度経済成長を経て、世界屈指の経済大国となっていた。焼け野原から奇跡の復興。その姿を諸外国も評価していた。日本の繁栄は、優秀な日本人の頭脳や精神の賜物である・・・・メディアの論評はおおかたそんな類だった。

 こうした風潮を、不愉快に思っている勢力があった。彼らにとって、日本人が好景気に浮かれ、有頂天になり、自慢げに語る傍ら、負の遺産について全く問題にしようとしない態度には我慢ならなかった。
 彼らは自らを「左上位」といい、日本人とは違った存在であると定義していた。伝統文化に固執し、軍国主義的な日本を憎み、画一的で排他的な日本人を見下していた。
「ニッポンジンめ・・・・お前たちは民主主義を理解できないのか・・・・」
 リーダーの蘆屋道満が、怒り狂っていた。
「右上位のせいですね。奴らが日本人を扇動したんだ。オレたちが油断している隙に、でしゃばりやがって!」
 メンバーの安倍益材は言った。
「奴ら・・・・日本が戦争に負けて、絶滅したと思っていたが・・・・」
 もう一人のメンバー・津宵恩奈は言った。
「このままでは日本は再び同じ過ちを繰り返しかねない・・・・お前たち!ぐずぐずしている暇はない!こうなったら街頭作戦だ!!すぐ用意しろ!!」
 蘆屋が二人を急かせた。
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