美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 そして、謝られた。知っていたら絶対配属しなかったと言った。その後、奴は本音を漏らした。

 さくらの独立を阻みたい気持ちが強かったと言われた。僕をけん制するために、学生時代にひと悶着あった彼女を利用したつもりだったのにと悔し気に言われた。

 そう、つまり名取は彼女に利用されてしまったことにきづいていなかった。林は名取に、店の実権を握ってでもさくらを独立させませんので安心してねと言ったそうだ。

 きっと彼女は僕らの交際も名取から聞いて全部知っていて、店ごと乗っ取る気なのだろう。僕が出資していることも知っての上だ。でも、彼女に僕と結婚する気があるのかはわからない。だが、彼女の父親の目的は結婚にある。

 彼女がなぜフラワーアーティストになったのか。彼女自身から聞いたほうがいいと名取に言われた。詳しくは知らないと言うのだ。

 あいつは元から彼女が好きだったので自分の会社へ入れた段階で満足したようだった。一時期特別な関係だったとも匂わせていた。
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