美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 縁談が降るほどに来るのは彼の遠くない未来に神崎造船の社長就任が他の人に見えているからだとも言っていた。

 わかっている。

 彼の横に立つ覚悟を持って帰る。彼が必要としているのはそういうことだ。口には出さないがインタビューがそれを教えている。

 それほどの自覚が自分にあるのか、鏡に映る自分を見て考える。でもあのころのように尻込みするほどではなくなったと思う。

 それに、彼のことだけではない。

 ベリが丘のお客様も放っておけない。芹那さんの話を聞いたら余計に心配になった。どうにかして、ベリが丘とこちらの仕事を両立できるようにやっていくしかない。

 私はベリが丘に、彼のもとへ帰る決心を固めた。急いで仕事を片付け、今更だが今後の交渉を始めたのだった。
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