結婚お断りします!イケメン准教授からの執拗なプロポーズ


スカイバーを出て、下りのエレベーターに先生と乗った。来た時と同じでエレベーターの中には私たちしかいなかった。

「九条さん、ありがとう。助かったよ」

エレベーターが下がり始めると先生が言った。

「お役に立てて良かったです」
「九条さんにお礼をしたいんだけど」
「お礼なんていいですよ。大した事していませんし」

女性たちから敵意のある視線を向けられたけど、想定内の事だ。パーティーも一時間以内で切り上げたから約束の時間より早かったし、お礼をもらう程の事ではない。

「九条さんは十分、役割を果たしてくれたからちゃんとお礼がしたいんです」

私も父から逃げる為に先生を利用させてもらったから、なんか気が引ける。

「本当にいいですよ」
「僕の気が済みません。お礼をさせて下さい」
「本当に大丈夫ですから」
「人は何かしてもらったら、何か返したくなる。返報性のルール、忘れましたか?」

昔、先生の講義で習った。

「それにタダより高いものはないですから。あとで九条さんに何を要求されるかと思うと恐ろしくて、今日から枕を高くして眠れなくなります」
「何も要求しませんよ」
「何も要求されないのは貸しを作るようで気持ち悪いんです。ちゃんとお礼をさせて下さい」

面倒な人だな。お礼なんていらないと言っているのに。

「わかりました。じゃあ、私と一緒にツインタワーに行きませんか? 展望台のチケット買って下さい。それでチャラにしましょう」
「ツインタワーですか」
「ホテルを出たら行ってみようと思っていたんです。ベリが丘タウンに初めて来たので」
「なるほど。でしたら、ツインタワーのVIP専用階にご案内しましょうか」
「VIP専用階?」
「高層階にVIP専用のラウンジとレストランがあるんです。パリの名門製菓店で修業したパティシエが作ったケーキも食べられますよ」

名門製菓店で修業したパティシエのケーキ!
めっちゃ食べたい! 展望台よりも興味がある!

「是非、お願いします!」
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