結婚お断りします!イケメン准教授からの執拗なプロポーズ
「桜子も、もう26歳だろう。お父さん、桜子に藤堂さんを紹介したかったんだ」

笑顔で父が話しかけてくる。

「桜ちゃん、いいお話よ」と瑠璃さんも話に入ってくる。
「藤堂さんは経済的に豊かだし、何不自由ない生活ができるわ。バツイチだけど、前の奥様との間にお子さんはいないし、桜ちゃんより20歳年上だから包容力もあって、結婚相手に申し分ないわ」

やっぱり藤堂さんと私を結婚させたいのか。しかも、20歳年上のバツイチ男を結婚相手に勧めるとは呆れる。本当にこの人たちは昔から自分の都合しか考えていない。

「ちょっと待って下さい。私は結婚するつもりないです」

父と瑠璃さんが私の発言に戸惑ったように互いの顔を一瞬見た。
私が断るとは思っていなかったんだろう。本当に都合のいいようにしか考えない人たちで困る。

「桜子、いつまでお前はワガママを言ってるんだ。お前が家を出たいと言った時、家賃だって、大学の学費だって出してやっただろう。これ以上の勝手は許さないぞ」

確かに父の援助を受けて大学を卒業したけど、銀行に就職して、四年分の学費と家賃を父に返済をした。一人で生きていくと言った時に父に学費と家賃を返せと言われたからだ。私はもう父から自由なはず。

「お父さんには学費も家賃も全部返済しました。私はもう自由の身のはずです」
「桜ちゃん、そんなドライな事を言わないでちょうだい。家族なんだから。お父さんは桜ちゃんに幸せになって欲しいのよ。ねえ、あなた」

瑠璃さんの視線を受けて父が頷く。

「女は30歳までに結婚するのが一番なんだ。若いぐらいしかお前には価値がないだろう」

勝手に私の価値を決めないで欲しい。
藤堂さんが私を見てニヤッと笑う。好色そうな笑みに背筋がゾッとした。

「桜子さん、心配な事は沢山あると思いますが、僕が一生、桜子さんの面倒を見てあげますから安心して下さい」

冗談じゃない。私の面倒は私が自分でみる。こんな失礼な人とは絶対に一緒になるのは嫌だ。

「藤堂さんに面倒を見てもらわなくても、一人で生活できますから」
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