キミに「好き」だと伝えたい
キミに「好き」だと伝えたい


私、橋下(はしもと) 純夏(すみか)の住む町は毎年8月最後の日曜日に、お祭りが開催される。


「純夏ーっ! 何やってんだよ。早く来ないと置いてくぞ」

「待って、今行くから」


家が近所の幼なじみ・中嶌(なかじま) (かい)に声をかけられた私は、急いで玄関を出る。


夏の始めに新しく買ってもらった、白地に赤い金魚が描かれた浴衣をお母さんに着せてもらって。

いつもはストレートのセミロングの黒髪を、今日はお団子にまとめて。

軽くメイクをしていたら、遅くなってしまった。


「おっ、お待たせ! 海」


私を見た海は、ほんの一瞬目を大きく見開いたように見えたけれど。


「ったく。遅せぇんだよ、純夏は。行くぞ」


ほんのりと顔を赤らめた海は、スタスタと歩いていってしまう。


私も急いで、海のあとを追いかけるけれど。


カランコロン。


慣れない下駄を履いているせいか、いつもよりも歩きづらくて。海になかなか追いつくことができない。


すると海が立ち止まり、こちらを振り返る。


「純夏、お前どんだけ歩くの遅いんだよ。ノロマ!」


海の叫ぶ声は、蝉の鳴き声のようにうるさい。


「し、仕方ないでしょ? 今日は下駄なんだから」

「はぁ……。ほんと、しょうがない奴」


盛大なため息をつくと、海の大きな手が私のほうへと伸びてくる。


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