愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
薄らと宣利さんが笑い、ぶるりと典子さんが身体を震わせる。
この人は絶対に怒らせてはダメだ。
なまじお金があって社会的地位も高いから、やろうと思えばきっとなんだってできる。

「それに知らないと思ってるんですか?
あなたがツインタワーの運営にお金を積み、得意の恫喝で知り合いの店とやらを捻じ込んだのを」

「そ、そんなこと、してないわ」

否定してみせながらも、彼女の目が泳ぐ。
だから私に泣いて許しを乞えば取り下げてやるとでも言うつもりだったんだろうか。
いや、それで溜飲を下げて取り下げてくれればいいが、そんな私を嘲笑い、バカにして、父から店を取り上げるつもりだったんだろう。
怒りでまた我を忘れそうになる私の手を、宣利さんが握ってくれる。
それで幾分、冷静になれた。

「可哀想に、ある人は精神を病んで後悔にさいなまれていましたよ」

きっとその人は典子さんに、私と同じように心が折れるまで怒鳴られたんだろう。
本当に卑劣な人。
……ううん、違う。
可哀想な人、だ。
環境が彼女をそうしたのだと同情している部分もあった。
でも、それは違う。
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