愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
第七・五章 仄暗い復讐心
愛する女が目の前に、血の気のない顔で横たわっている。

「花琳……」

本当に生きているのか怖くなって、その顔の上に手をかざした。
弱々しいけれど、温かい呼気が僕の手に当たる。

……生きてる。

それにほっと安堵し、また椅子に座り直した。
どうしてこんなことになったのかと考えるが、僕の甘さ以外なにものでもない。
あのとき、姉の参列を許そうとする花琳に断固反対していれば。
そうすればきっと、こんな事態にはならなかった。

「ごめん。
本当にごめん」

後悔したところで時間が巻戻るわけではない。
僕はただ、花琳にひたすら謝るしかできないのだ。

『私をこけにするからこうなるのよ!』

花琳に足を引っかけた姉は、その場で取り押さえられた。
僕が姉になにもしなかったのは、同情したからとかではない。
あんなバカ女にかまっていられなかったからだ。
花琳が死んだらどうしよう。
子供を失うのが怖い。
それ以上に花琳を失うのが怖い。
彼女の名を呼び、去っていきそうな命を留めようと必死に抱き締めた。
それからしばらくの記憶が曖昧だ。
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