愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
第一章 短い結婚生活
それは、突然やってきた。

花琳(かりん)、すまん!
結婚してくれ!」

仕事が終わり家に帰ってきて、ドアを開けた途端にいきなり父が土下座する。

「……は?」

おかげで理解が追いつかず、間抜けな一音を発して固まった。

「お前には悪いと思っている。
でも、従業員のためなんだ。
頼む、結婚してくれ!」

娘相手に父が、再び床に額を擦りつける。
結婚してくれとは誰と?

「えっと……。
お父さんと?」

「違う!
TAIGA(タイガ)』の御曹司とだ!」

めっちゃ否定されたけれど、あの言いようでは誤解されても仕方ないのでは?
まあでも、冷静に考えれば父親と結婚とかないよね。
しかし私はそこまで、混乱しているのだ。

「なんで私が、TAIGAの御曹司と?」

TAIGAといえば日本どころか世界有数の自動車企業だ。
あまりに巨大な企業が故に、本社工場のある一帯はTAIGAにちなんで大河(たいが)市などと名前を変えたくらい。
そんな企業の御曹司と、たかが外食チェーンの娘が結婚だなんて考えられない。

「それは……」

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