続▪︎さまよう綸

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 親父たちと相談し、10月の俺の誕生日にも他の組を呼ばなかったように正月も呼ばないことに決めた。暑気払い同様ホテルで組長クラスだけの新年会を行い、それを今後恒例としていく。この家業も先が見えないから会社経営を主とする組がほとんどだ。昔ながらのやり方を続けるのではなく、時代にあったやり方に変えていく必要のある時だ。

 そして1月1日元旦、大広間にびっしりと膳が並び組員が揃う。大晦日の昨夜から騒いで寝ていない奴も多いだろうが新年の挨拶の場に相応しく皆、引き締まった表情だ。

 俺も紋付きで皆の前に座るが俺の隣に綸はいない。

 昨夜‘今年最後だ’と抱き始め、日付が変わると‘今年最初だ’と言って抱き続けた。二人でどろどろに溶け合いベッドが使えないほどになってしまった。夜明け頃に狭いシャワー室で一緒にシャワーを浴び…もう一度抱くと、綸の声は抗議の声も出ないほどで…やり過ぎた…
 
 ベッドの下、カーペットの上で綸を抱きしめて眠ったが今日はいつまでも寝かしておいてはやれない。2時間足らずで彼女を起こすと挨拶をする彼女の声は息のままだった…まずい…啼かせ過ぎた…

 それでも今日は寝かしておいてはやれない。俺も紋付きを着るが綸はそれ以上に支度時間が必要だ。ぐったりする彼女を抱き上げ彼女の支度が揃う客間に連れて行くと国府の一美さんと彼女が連れてきた着付けの女性、そしてセツさんが待ち構えていた。綸の声にならぬ挨拶を聞き新年早々俺は高校生の時のように一美さんに怒られ、綸は部屋の中を見て泣き出し…まだ来ていない。
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