続▪︎さまよう綸

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 特別な猛暑だと言われた夏が終わったと感じたのは10月に入ってからだった。

「まだ昼間は半袖でいいですね」
「俺、ここにいると1年の半分以上8ヶ月くらい半袖じゃないかな」
「あーわかります」

 本家の台所で夕食の手伝い、今はひたすら肉や魚にパン粉をつけフライの下ごしらえをしながら京太さんと話す。

「ソースはとんかつソースと…オーロラソースを作りますか?」
「うん、どんぶり2個に作っておいて」

 はーいと、パン粉だらけの手を洗っていると

「ただいま戻りました」

 伊東さんと小笹さんが和菓子を持って帰ってきた。

「おかえりなさい。ありがとうございました。早速食べちゃいます?買いに行ってくれた人の特権で」

 ここ2、3日夏の疲れが出たのか午前中ダルかったので今日は和菓子屋さんへ行くのを控えたのだ。

「いただきます。綸さん、体調は?」
「何ともないです、ありがとうございます。はい、ほうじ茶」
「昼もよく食べたし問題ないよな」

 小笹さんに聞かれ、私と京太さんが答えた時

「ただいまぁ、何が問題ないって?」

 3日間ほど関西へ行っていた今泉先生が帰ってきた。

「先生、おかえりなさい。お茶ご一緒にどうぞ」

 4人分のお茶を置き和菓子を広げ、お父さんと畠山さんの好きな和菓子を手にすると

「ごゆっくり」

 食堂に声をかけ廊下に出た。
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