そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

第六話

 翌朝は彼と目を合わせるのが恥ずかしくて。

 それは涼介さんもそうみたい。

 あんなに激しく愛してくれたのに。まるで別人のよう。

 向かい合って食事をする姿がお互いぎこちない。

「今日は遅くなるから、先に寝ていて」
「そんなに遅いんですか?」
「もしかしたら、夜中になるかも知れないし」
「……そう、ですか」

 今までは彼がどんなに遅くても、全然平気だったのに。
 どうしてかな。今日は心が寂しいと疼く。

「お夜食とか作っておきますか?」
「いらない…かな。出先で食べるから」
「そう…ですか。分りました」

 ピンポーン。
 いつものようにインターホンが鳴る。
 高津さんがお迎えに来たのだ。

「あ、じゃあ行くね」

 玄関まで見送るために私も席を立つ。

「行ってらっしゃい。気をつけて」
「あ、ああ。美里も今日は残業しないで早く帰っておいで。心配だから。じゃあ行って来る」

 パタンとドアが閉まる。
 彼が出て行った空間をじっと見つめてしまう。それも今までは無かったこと。
 ふーっと大きく息を吐いた。今日は何故か、緊張してしまうからだ。

 変な私たち。
 けれど、いつまでも余韻に浸っているわけには行かない。
 私もオフィスに行かなければならないのだから。

「さてと、クリーニングに出す服をまとめちゃおうかな」

 気持ちを切り替える。

「美里っ」
「えっ!忘れ物ですか?」
「ああ。大事なもの」

 腕を掴まれると重なる唇。

 嘘っ!?

「行ってらっしゃいのキス」

 わざわざそのために戻ってきたの?

 私はカーっと顔が熱くなるのを感じた。
 
 そんな私を残して彼は再び急いで出て行ったのだった。
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