龍神様のお菓子
結局、昴の件を却下された夢香は真新しい制服に渋々袖を通す。サイズはビックリするほどピッタリで少し気味が悪い。
面接くらいしてあげてもいいじゃない…
内心そんな事を思いながらも、雇われている身分ではそこまで強く出ることが出来ない。
悶々とした気分で更衣室のロッカーを閉めると、振り向き際に誰かと衝突した。
「うわ!すみません!」
ぶつかってしまった女性に慌てて謝罪すると、
「あー、君かー」
と呑気な声が返ってきた。
「ご、ごめんなさい、私…」
「あぁ、いいよ、いいよ、気にしないで」
女はニコニコと笑うと、ロッカーの扉を開く。
「君、松木さんだよね?今日が初日?」
「は、はい!松木夢香と言います」
どこか、妖艶な雰囲気の女に夢香は頬を赤らめる。
「私は、鬼頭桜《きとう さくら》私もここで働いてんだ」
桜と名乗った女はそう言うと「宜しくね」と微笑んだ。とても綺麗な笑顔に夢香の心臓が小さく跳ねる。
「あ、そうだ。君にこれをあげよう」
一人ときめく夢香を他所に、桜は鞄の中から小さな包みを取り出し、夢香へと手渡した。
「開いてご覧」
掌に置かれた包みを開くと、そこには小さな花を形どった塊が三つ姿を現した。
「これは、何ですか?」
夢香は困った様に尋ねる。
「あら、知らない?それは落雁って言うんだよ」
「らくがん?」
初めて聞いた言葉に夢香は小首を傾げる。
「米粉や豆粉を混ぜ合わせた粉に砂糖とか水飴を混ぜて木型で押し固めたお菓子。まぁ、本来は仏壇やお墓に供える物なんだけど、家に大量に余ってるから会った人に配ってるんだ」
桜はそう言うと、再び柔らかく微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!」
夢香はもらった落雁を制服のポケットへとしまうと、小さく頭を下げた。
「ちなみに龍青には内緒だよ?」
「え?」
「あいつは、あぁ見えて嫉妬深いからね…、私が贈り物をしたなんて聞いたら何をされるかわからない」
「はぁ、わかりました…」
いまいち理解が追いつかないといった表情の夢香に桜は小さく微笑む。
「ま、女同士の秘密ということにしといておくれ」
アルバイト初日、夢香は人生で初めて女の人に心を鷲掴みにされた。
面接くらいしてあげてもいいじゃない…
内心そんな事を思いながらも、雇われている身分ではそこまで強く出ることが出来ない。
悶々とした気分で更衣室のロッカーを閉めると、振り向き際に誰かと衝突した。
「うわ!すみません!」
ぶつかってしまった女性に慌てて謝罪すると、
「あー、君かー」
と呑気な声が返ってきた。
「ご、ごめんなさい、私…」
「あぁ、いいよ、いいよ、気にしないで」
女はニコニコと笑うと、ロッカーの扉を開く。
「君、松木さんだよね?今日が初日?」
「は、はい!松木夢香と言います」
どこか、妖艶な雰囲気の女に夢香は頬を赤らめる。
「私は、鬼頭桜《きとう さくら》私もここで働いてんだ」
桜と名乗った女はそう言うと「宜しくね」と微笑んだ。とても綺麗な笑顔に夢香の心臓が小さく跳ねる。
「あ、そうだ。君にこれをあげよう」
一人ときめく夢香を他所に、桜は鞄の中から小さな包みを取り出し、夢香へと手渡した。
「開いてご覧」
掌に置かれた包みを開くと、そこには小さな花を形どった塊が三つ姿を現した。
「これは、何ですか?」
夢香は困った様に尋ねる。
「あら、知らない?それは落雁って言うんだよ」
「らくがん?」
初めて聞いた言葉に夢香は小首を傾げる。
「米粉や豆粉を混ぜ合わせた粉に砂糖とか水飴を混ぜて木型で押し固めたお菓子。まぁ、本来は仏壇やお墓に供える物なんだけど、家に大量に余ってるから会った人に配ってるんだ」
桜はそう言うと、再び柔らかく微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!」
夢香はもらった落雁を制服のポケットへとしまうと、小さく頭を下げた。
「ちなみに龍青には内緒だよ?」
「え?」
「あいつは、あぁ見えて嫉妬深いからね…、私が贈り物をしたなんて聞いたら何をされるかわからない」
「はぁ、わかりました…」
いまいち理解が追いつかないといった表情の夢香に桜は小さく微笑む。
「ま、女同士の秘密ということにしといておくれ」
アルバイト初日、夢香は人生で初めて女の人に心を鷲掴みにされた。