君の隣にいられたなら。
気を取り直して、勝手にしまっていた重いドアを押すと、部屋の前を歩いて教室に戻ろうとしていた綺音とばったり遭遇。
綺音は私たち2人を見て目を見開いた。


「何してたの?」
「佐伯先生に頼まれた荷物一緒に運んでもらってたの」
「へ〜。今日一緒帰る?」
「帰んないけど」
「ラーメン行こうよ」


今日は特に用事がない。
綺音もそれを知ってるみたいで、いつもと違って食い下がってくる。


最近、一緒に帰ろうをよく聞く。
その度に口角が上がったり、胸がドキッと音を鳴らしたりするのに気づかないふりをしている。
そんなことしたって、気持ちが変わることは特にないんだけれど、頑なにそうしておいた方がいいという圧倒的な自信だけはあった。


「ラーメンかあ。ファミレスがいいな」
「じゃあそれでもいいよ」
「わかった」


私たちの会話に、山田くんは先に行くね、と手を振っていってしまった。
私も慌てて大きめの声でありがとうと言って手を振った。


綺音は山田くんの後ろ姿を見ながら、私に小声で呟く。


「何もされてないの?」
「へ?何が?」


すごく深刻そうな顔をされて、当の本人、私はなんのことかさっぱり。
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