君の隣にいられたなら。
けど、ドキッと心臓が音を立ててしまったから、すごく動揺した。
先輩にしっかり翻弄されてる。


「あの、せんぱ……」
「さ、帰ろ。そのままの意味だから、俺からこれ以上言うことなんてないよ」


優しい笑みはそのままで、さりげなく私の手を握った先輩。


え、と小さな声が漏れたけど、先輩は聞こえなかったのか、はたまた聞こえないフリをしたのか、私の手は離さなかった。
ドキドキと音を立てているのは私の心臓。


そのまま先輩は電車に乗って、最寄駅に着いて、私の家の前まで着いてきてくれた。
それから、私の顔を見てフッと笑う。


「顔、赤いよ」
「〜っ、」
「茉白ちゃんは、案外うぶなんだね。
綺音しか付き合ったことない?」


私は顔を逸らす。
耳まで赤いよ、なんてツンと指で右耳の突かれて、なお加速。
顔の赤さも、鼓動も、両方。


「茉白ちゃん、ゆっくりでいいから考えてね」


先輩はそう言うと、私の手に何かを握らせて、バイバイ、と手を振った。
どんどん小さくなる背中を見つめながら、私の手の中にある柔らかい感覚に、気持ちが傾く。


期間限定の、桜もちバージョン。
出会った日に私が先輩に見せたうさぎの期間限定のキーホルダーが、私の手の中にあった。


私はしゃがみ込んで頭を抱えることしかできなかった。
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