何があってもどこにいても、僕は君だけを愛してる
対決
柚香が家を飛び出して行ってしまい、一人家に残った遼は、服も着ずにカンバスに向かって立っていた。

目を閉じると、痩せたメガネの男、傷ついた柚香の顔、軽蔑の眼差しで見下ろしてくる花、といった胸をえぐる映像がまぶたの裏に映った。


遼は深く息を吸い、脳裏に浮かぶその像をバラバラに壊していった。粉々になった色の破片が溶け、絵の具の色がまじりあって広がるように、目に焼き付いていた映像たちはカンバスに描くイメージへと姿を変えていく。


遼は目を開けると、勢いよく筆を取り、カンバスにぶつけるように描き始めた。なかなか描けずにいた最後の一筆が、くっきりとしたイメージになって浮かんだ。
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